映画「T2 トレインスポッティング」

映画「T2トレインスポッティング」を観た。舞台は前作「トレインスポッティング」から20年後。前作ラストで主人公が「在る」人生を選び笑みをたたえて橋を渡る。本作はその場面の回想から始まる。

4人の登場人物たちは、20年前に生きた人生からの強烈な殴られたような影響力の中で今を生きている。前作ラストで人生を選んだ主人公も、そのとき手に入れたもの(金)の引力によって、故郷に引き戻される。

実家の自室に戻りイギーポップを聴けないのは、20年前に生きた人生が今の人生を蝕んでいることをよくわかっているからだ。やむを得ず彼らはかつての人生をもう一度生き始めることになる。しかしその中で、自分たちが変わり、人々が変わり、時代が変わっていることを理解する。

妻・子供との別れ、ブルガリア美女との出会いにより、次の世代や他者の存在を意識するようになる。もう過去と同じように生きることはできない。その場所にはもう別の人々が居る。

次第に、過去を理解し今の社会の中に位置づけること、つまり過去を物語にすることを意識するようになる。過去を小説化し、別れた嫁・息子に送りつける。それは彼らにとってドラスティックな、希望を得られる発想だった。

クライマックス、彼らは敵を殺さず元の場所に送り返す。つまり、自分たちを「今」の社会の中に位置づけることを選ぶ。

過去をもう一度生き、物語にしたことで、彼らは今の人生を生きることができる。イギーポップを聞くことができる。